透析アミロイドーシスについて
透析を始めて10年間位は、透析アミロイドーシスに苦しめられることはないという。
しかしである、それを過ぎてくると少しずつその影響が掌(てのひら)にでてくるという。所謂
毛根管症
候群である。アミロイドーシス繊維が沈着し、親指と中指,人差し指に痺れが出て、付け根辺りまで起こる
ようである。初期の頃は、それ程ひどくはなく、出たり消えたりするようであるが、やがて手術をして取り除
かねば辛いという。手術後すうとして直るようである。透析病院では、この透析アミロイドーシスの対策をと
るより、手術の方が簡便で、安くできるのかと思う。でも、それは、初期の症状の時のみかと。
この毛根管症候群のチェックの仕方は、親指と小指で輪を作り、力を入れることが出来れば異常なし
とか。
透析患者の間では、この透析アミロイドーシス症状は、前期、中期、後期に分けて考えているようであ
ります。
これは、血液検査項目の B2ーMGと呼ばれるタンパク質が、何らかの形で変異し、アミロイドーシス
化し、筋肉内等に沈着して引き起こすことが分かってきているからであります。さらに、このB2−MGは、
食事のように自分でコントロールできるものではなく、自分の体内細胞が、作り出すものであり、腎臓が
正常に働いていれば、このB2−MGを処理し、再度有用なたんぱく質として取り込んだり、排出したりし
て、うまく調節していてくれるから、何ら心配することは無いようです。が、透析患者には、残念なことに、
この機能は喪失してしまっているのであり、透析によってしかこのB2−MGを除去出来ないのであります。
いいかえれば、透析では、腎臓のようには処理できないのであります。だから、どうしても不要なB2−M
Gが体内に残留してしまうことになるのでありましょう。これが、長い間かかって透析アミロイドーシスとし
て出現してくることとなるようであるという。
故に、如何にこのB2−MGを透析初期から多く取り除くかを考えていかなければならないのでしょう。
逆の言い方をすれば、透析医からみれば、透析患者の透析アミロイドーシスは、避けられない事として
処理されやすいように思う。だからだろうか、透析専門病院のなかには、B2−MG値の検査を血液検査
項目から除外して、知らん顔の八衛兵を決め込んでいる病院もあるという。発症が、早いか遅いかの違い
だけと考えられてしまうのでしょう。
患者にしてみれば、延命に特化されてしまうことは、この先、生きていくうえで苦痛を背負わされていくこと
に通じ、辛い事ではあります。予後のQOLをも考えて延命作業を望むものである。
そのためには、Kt/v値は、透析導入時から2.0前後が望ましいとも、それには、長時間透析(5時間)
がいいとか、透析時の血液流量は、透析患者の体重の1.5倍がいいとも聞いた。
とすれば、私の場合、ドライウエイトは、80Kgであるから 80000g×1.5÷(60分×5)=400ml/分とな
り、QBは、5時間透析でも、400で回さないといけないことになる。これは、むちゃくちゃ難しいことではある。
過去、私の最高のQBは、300ml/分であります。この値に行くのに、ドクターの許可を得るのに相当な情
熱が患者側にないとなかなか許可されないのではないでしょうか。
しかしである、既に他のHD(血液透析)病院の一部では、高齢の方でもばんばん 400ml/分でQB(血
液流量)を回している所もあるという。げなげな話ではなく、現実に実施されているという。また、そこの看護
師であり、患者でもある方に直接会い、話を聞かれたHPを運営されている透析患者の先達の方は目から
うろこが落ちる思いをしたともHP上で述べてみえました。
大部分の透析医も、透析患者さんもこうした高いQBに対してアレルギーを持ちすぎではないかとも話して
おられるのを読むにつけ、私なんぞは、うーーーーーんと・・・・。悩むしかないのであります。
事ほどかように不可能なことに挑戦しないと、予後の透析アミロイドーシスに対応できないともいう。
今現在、透析アミロイドーシスを引き起こす B2−MGの簡易な除去率は、私の場合、70パーセント台後
半でしょうか、ここは、意を決して、80パーセント台後半まで引き上げられないものか思案中。主治医の先生
に相談するしかないでしょうね。長い時間をかけてやっていくことではあります。
これから述べることは、透析患者の先達の方のHPで記述されていることの繰り返しとなりますが、透析ア
ミロイドーシスについての貴重な提言であると感じておりますので敢えて述べようと思います。
それは、新潟大学の下条先生の透析アミロイドーシスについての研究報告でした。体内に於けるアミロイド
の基となるB2−MGの3プール存在報告です。
更に詳しい事柄をお知りになりたい方は、インターネット上に、新潟大学 下条教授等の関わっておられる
研究等の紀要がPDFの形でアップされています。そのURLを添付しておきますので参照されたい。
( http://dspace.lib.niigata-u.ac.jp:8080/dspace/bitstream/10191/6948/1/2009030085.pdf
です。)
透析患者には、4プールなのかもしれませんが、ここでは、3プールとして記述されていました。
B2−MGの人体内の存在箇所は、
第1プール 血管内
( 動脈、静脈内 )
第2プール 毛細血管内
第3プール これは、透析患者のみのようですが、関節部位内等のようです。
そして、3〜4時間の透析では、弟1プールのB2−MGは、完璧に除去されるという。しかし、毛細血管内とか
関節内に存在するB2−MGは、4時間透析の場合でもその最終時刻間際になって始めて血管内に移動を始め
るという。それ故、大幅なB2−MGの除去は、4時間透析以下では、極めて難しいという研究報告であった。
ここに長時間透析(5時間以上)の意義がKt/v値の向上以外にもある。と、我が意を強くした記述ではありました。
参考までに私のB2−MGの除去率の推移を記述しておきます。
1. 市民病院から転院した透析専門病院( HD透析 )でのB2−MGの除去率
H19/12/17 H20/6/2 透析条件は、4時間半と4時間透析であり、
透析前 B2−MG 17.7 16.5 QB 250ml/分 QD 400ml/分
透析後 〃
7.4
7.0 ダイヤライザー 2.1u ニプロ F
U
簡易除去率 58.2% 58.6% 針 17Gの簡易除去率ではあります。
2. 現在の透析をしている病院( HDF透析 )での B2−MGの除去率
H21/4/20 H21/6/22 H21/10/26 H22/2/15 ここまでの透析条件
透析前 B2−MG 21.8 23.3 22.4 21.7 は、4時間透析、QB
透析後 〃 5.5 5.1
4.6 4.6 250〜280.QD 5
簡易除去率 75.5% 78.1% 79.4% 78.8% 00前後 針 17G
H22/6/21 H22/10/18 H23/2/21
H23/6/20 H22年4月より5時間
透析前 B2−MG
22.1 18.0 19.7 18.0 透析。QB 250〜255
透析後 〃 3.8 3.8 4.2 3.9 QD
600に限りなく近い。
簡易除去率
82.8% 78.9% 78.7% 78.3% 針 16Gでした。
当然 血液透析より血液濾過透析の方が、B2−MGの除去率は、数段良いのは明らかであり、血液濾過透析で
の除去率の推移をみても、透析前、透析後のB2−MG値は、除々にではあるが低下しているのであり、体内に残る
B2−MG量は、減少傾向にあることが分かります。更に除去率を上げる工夫をすれば、健康人に近いB2−MG値に
近づくのではないか。やってみる価値は十分あるように思っています。 健康人の血液検査の血中B2−MG値は、
0.5〜2.0μg/mlであり、透析後の透析患者の血中B2−MG値が出来れば、2.0以下になれば可であろうか。
しかしである、先のHP上で述べられていた研究報告によれば、透析4時間では、なかなか毛細血管内のB2−M
Gは、除去出来ないということのようでありましたが、私のHDF透析4時間と、透析5時間では、B2−MGの除去率
に、それ程の差異を感じないのであるが、これで、毛細血管、或いは関節内にあるだろうB2−MGを除去できてい
るのであろうか。透析前のB2−MG値は、確かに減少傾向にはありますから、残留B2−MGは、減少していると判
断していいのでしょう。この結果について、下条先生の判断を仰ぎたいとは思っております。
私の所属する透析室では、B2−MGの検査は、4ヶ月に1回であり、長い目でその推移をみていく必要がありましょう。
( 平成23年6月22日 記述 )
H23/10/24 H24/2/20
H24/6/18
透析前 B2−MG
17.4 19.7
20.7
透析後 〃 3.5 3.8 4.7 *
H24/6/18のデータは、先回
簡易除去率
79.9% 80.7% 77.3% 先々回とは、透析の形が違い
5時間透析 HDF透析 HDF透析 血液(HD)透析 ますから、一概に比較できない
QB 265 QB 270 QD QB 285 QD
600 かとは思います。
QD
600に限りなく近い。
600近く。 近く。 ( 平成24年8月21日記載 )
針 16Gでした。 針 16G 針 16G
B2ーMGは、自身の細胞が、勝手に造るものである以上、自分ではコントロールできないとか。やはり、透析により適切
に除去するしかない。今まで順調に残留B2ーMGが減少してきていましたが、QBの増加だけでは、やはり対処は、難しい
のかも知れません。こうした血液濾過透析では、有用なアルブミンが減少しやすく、為に蛋白摂取量も弱冠増加傾向にし
ている関係で、リンも増加。今は、週6日は、ホスブロック錠 1日3回。チュアブル錠は、日曜日のみ 1日3回で対処。そ
の結果、リンの透析前値は 4.4と改善。その直前の検査は、5.9とやや危険ゾーンになっていました。
( 上記記述は、H24年2月21日に記述。)
お陰で、アルブミン値は、3.8〜3.9を行ったり来たりの状況です。この透析室では、アルブミン値が、3.5前後で、血
液濾過透析から血液透析に変更する分岐点でもあります。本来は、4.0が望ましいのですが、残念なことに私のデータで
は、ここの所4.0は、夢のまた夢の状況のようです。かなり、たんぱく質を多く摂取しているのですが・・・・・・。
その為、アルブミンの除去率を知りたいのですが、そうしたデータが無い為、あきらめていますが、まあ、最後の手もあ
り、鋭意検討中であります。
当院の透析室では、HDF透析に機器を入れ替えておりまして、その当時の透析データを学会に発表されておりました。
そのデータを御提供頂けましたので、併記させて頂きます。
その記録は、今から数年前のことかと、丁度当院の透析を血液透析から血液濾過透析へと転換した直後であったの
ではないでしょうか。
目的としては、V型ダイアライザー FX−S180 PES−195α APS−18E 三種の性能評価であり、48L 前希釈on-
line
HDFにおける溶質除去性能の比較検討であったようです。
対象透析患者は、安定期維持透析患者で男性 8名 平均年齢 59.8歳 平均透析歴 13年に対し、3種類のダイアラ
イザーを用い、QB 200ml/min
QD 500ml/min QF
200ml/min条件にて2週間クロスオーバーし、BUN Cr UA iPのクリ
アランス、除去率、更に低分子量たんぱくである B2−MG・α1−MGのクリアランス、除去量、クリアスペース、そしてアルブ
ミン漏出量を測定されていた。以下私は、 B2−MG・α1−MGのクリアランス、除去量、クリアスペース、そしてアルブミン漏
出量のみのデータを取り扱いさせて頂きます。が、除去量については、この数値がどのようにして出されているのか見当を加
えておりませんし、発表原稿より抜き出して記載したまでです。(特に透析時間は、記載されておりませんでしたが 4時間であ
る事を確認いたしております。
また、アルブミン漏出量は、各被験者のコンソール近くの排出透析液より部分抽出した量より
知りえた漏出量の平均値であるようです。)
ダイアライザー B2−MGの除去率 B2−MG除去量 α1−MGの除去率 α1−MG除去量 アルブミン漏出量
FX−S180 78.4% 205.8mg/L 27.2% 166.1mg/L
5.51
g
PES−19Sα 78.2 209.3 22.0
131.4
(一人平均16.4カ) 1.78
APS−18E 78.6 203.4
24.6 148.6
2.42
このデータから推察しうるにα1−MGの除去量とアルブミン漏出量の間には、明らかな因果関係があるように思える。
α1−MGの除去量が多ければ、アルブミン漏出量も多く、其の逆も言えるのではないか。それは、α1−MGとアルブミン
の分子量には、弱冠の差があるようでありますが、ダイアライザーでは分離できないようであり、α1−MGと一緒に抜ける
傾向にあるからではないだろうか。
それ故、各ダイアライザーには、α1−MGの抜け具合に微妙な違いがあり、その違いが、アルブミン漏出量に影響して
くるのでありましょうか。
私自身(透析歴7年目)のB2−MG・α1−MGの除去量は調べてありますので、併せて記載しておきます。( ともに5時間
透析 QB 280ml/min
QD 600ml/min 10L/h 前希釈 on-line
HDF の結果です。)
ダイアライザー B2−MGの除去率 B2−MG除去量 α1−MGの除去率 α1−MG除去量
PES−25SEα 簡易除去率80.7% 15.9μg/ml 検査せず
MFX−25s 検査せず 簡易除去率10.9% 11.9mg/L 以上であります。
当医院での性能比較は、残念ではありますが、各被験者の体内アルブミン総量に対する平均値漏出量が、8人の
被験者の平均値体内アルブミン量の何%に当たるのであるのかは、分からないようであり、そうした事が分かれば、α1−
MGの除去率より、アルブミン漏出量も推定出来るような気がしましたので、惜しいなあという気持ちであります。
只、一人平均のα1−MG除去量が、PES−19Sαでは、16.4mg/Lであるようで、私のMFX−25sでは、11.9mg/L
とを比較すると、体内からのアルブミンの漏出量は、1.78g前後位かと推測出来るのでは・・・。と想像いたします。
( 平成24年5月末 記述 )
心配していましたアルブミン値でありますが、H24/6/18とH24/7/28両日にかけ前後のアルブミン値を調べて頂きました。
H24/6/18 H24/7/23
透析前 アルブミン値 3.8 3.7
透析後 アルブミン値 4.0 4.2 以上の結果が得られました。(この数値は、透析中に
500gの食事を取った結果ではあります。)
それ故、HDF透析 5時間 補液 10リットル/時 では、私の場合透析にて体内からアルブミンが漏出していたとしても、
透析後では、若干増加しています。当然水分が徐水されていますので、濃度が上がった事と食事量も絡んでいるかと。
それ程、透析による体内のアルブミンの漏出を心配することなく、心置きなく、QB値を上げていっても問題はなさそうであ
りましょう。が、今一度、透析前後の食事を取らない場合のアルブミン値の推移を調査して頂く必要がありましょうか。
( 平成24年8月21日 記述 )
平成25年1月現在、QB値は、390ml/分まで上げております。若干 アルブミン値の減少を感じ、補水量を8ℓ/時と、総
補水量を10ℓ分少なくし、総補水量を40ℓとして頂き、アルブミンの漏出を抑えようと考え、実施して頂いております。
しかし、その為、B2−MGの除去率がやや低下しているようですが、やむを得ない事と考えています。
H24/8月以降のB2−Mg値の除去状況は、拙稿 私の B2-MG値の透析前・後の推移 を参照下さい。
(平成25年1月28日 記述)
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