透析に用いられる各種抗凝固剤(へパリン等)の特徴と注意点

             1.はじめに
                透析に用いられる一般的な抗凝固剤は、へパリンという液であります。
                この名の由来は、「ヘパリンの原料は牛や豚の腸粘膜から採取されるが、牛海綿状脳症 (BSE) 発生後の現在は健康な豚から採取された
               ものがほとんどである。肝細胞から発見されたため "heparin" と名付けられた(hepato- は「肝の」という意味)が、小腸、筋肉、肺、脾や肥満
               細胞など体内で幅広く存在する物のようです。
                化学的にはグリコサミノグリカンであるヘパラン硫酸の一種であり、β-D-グルクロン酸あるいは α-L-イズロン酸と D-グルコサミンが 1,4 結
               合により重合した高分子で、ヘパラン硫酸と比べて硫酸化の度合いが特に高いという特徴がある。この分子中に多数含まれる硫酸基が負に帯
               電しているため、種々の生理活性物質と相互作用する。」という。
               ( 詳しくは http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%98%E3%83%91%E3%83%AA%E3%83%B3 最終更新 2012年5月29日 (火) 21:52  を参照下さい。 )

                抗凝固剤の種類・特徴については、http://www.osaka-amt.or.jp/mtqa/qa041.html を参照下さい。

             2.へパリン使用上の注意
               (1) 汚染による細菌の増殖を防止するため, 製剤総則 (ガイドラインのようなもの) では「注射剤で分割使用を目的とするものは、別に規定するもの
               のほか、微生物の発育を阻止するに足りる量の保存剤を加える」としています。汚染は多種の微生物の混合汚染が考えられるので, 保存剤は多
               種の微生物に有効なものでなければなりません。一般に分割使用を目的とした注射剤以外はこのような想定をしていないため, 「一度密封容器中
               に注射針を接触した注射液にはまったく保存性がない」と考えるべきであるとする報告も見られます。
                このことが, 分割使用はしてはいけないと言われた理由です。

                製薬会社も, 病院の薬剤部も, ヘパリンの分割使用に関するデータ (細菌汚染の有無, 力価の低下) を持っていません。そのため「開封後はなる
               べく速やかに使用すること」として明確な回答を避けています。「ヘパリン生食」へのセラチア菌混入によって院内感染が起きた事例が過去に報告
               されていることから, 使用しているヘパリン製剤に保存剤が添加されているものに関しては, バイアル開封後, 冷所保存にて24時間で使用する。
                残りは破棄するというのが賢明だと思います (ご指摘のとおりエビデンスはありません)。 (琉球大学・糸嶺 達)}という記述もあります。
                詳しくは、http://www.jarmam.gr.jp/situmon/heparin.html を参照されたい。

                               (2) 扶桑薬品へパリン等の取り説改訂 (2007 年 7 月改)
                 ・ 容器内のへパリン液取扱上の注意として
                  「開封後直ちに使用し,残液は決して使用しないこと。」という一文が記載されている。改訂前からの条項であるようです。
                  詳しくは、 https://www.fuso-pharm.co.jp/cnt/seihin/pdf/heparin_inj_etc_200707.pdf を参照されたい。 

                 ・ へパリン使用について
                  取り説には、1ショット 1000〜3000単位 持続 500〜1500単位が記述されている。
                    ( https://www.fuso-pharm.co.jp/cnt/seihin/pdf/heparin_inj_etc_200707.pdf  参照 ) 
                  別の記述では、「血液体外循環開始時 1000〜2000単位(20単位〜30単位/Kg)を投与し、以後1時間に300〜1000単位(10〜20単
                                     位/Kg)を脱血側血液回路より持続注入する。
                  或いは、1ショットなし、持続 500〜1000単位(10〜20単位/Kg)使用方法もある。」と
                  (臨時透析 血液浄化機器 日本メデイカルセンター 2013年 参照)

                 * 平成30年2月現在 未分画へパリン ショット 1250単位 持続 750単位/時で6時間。計 5750単位使用中。
                  上記ショット 20〜30単位/Kgであれば、私の場合は、DW 75Kgですから1500〜2250単位まで可カ。持続は、10〜20単位/Kgであれば、
                 750〜1500単位までは、可カ。現在の使用量は、下限以下か下限に近い使い方でありましょうか。日本メデイカルセンターのKgあたりの使用量
                 基準値は、透析時間を何時間と想定しているのでありましょうか。おそらく、4〜5時間透析を想定している可能性は高い。*
                                   
             3.各種抗凝固剤の半減期
               ・ へパリン
                  「へパリンは、牛や豚の腸より摘出される。分子量は、10000〜20000です。血中のATV(アンチトロンビンV)と結合して、Xa因子、Ua因子(トロ
                 ンビン)に作用して血液の凝固を防ぎます。半減期は、約1時間です。

                  ATVと結合しないと効果が発揮できないというのがみそです。」( http://cetaka.com/blood-clotting2/ からの引用)

                  * 私の場合、ATVは、70%台。年々下降傾向かと。その為でしょうか、透析に入って数年後から透析回路中に残血が起こるようになりました。
                   某Drからは、ATVは、肝臓で産生されるとか。アルブミン値と正比例関係にあるようだとも教示されました。確かに私のアルブミン値は、4.0
                  を下回り、低い時は、3.3まで低下した事もあり、現在は、3.7前後かと。こうした事は、自らのタンパク質摂取とも関わっているのでしょう。
                                          現在(平成29年6月現在)使用しているダイアライザーに変更してからは、昨年の年末 1回のみAチャンパ内の残血の為終了近くで透析中止
                  となりましたが、以来それなりに同量のへパリン(総使用量 22mL)で透析は出来えています。私の体内でのATVは、ぎりぎりの状態でへパリン
                  と結合して働いているのでしょう。残血は、ありますからATVの量は、現在のへパリン量に対しては、若干少ない可能性があろうか。
                   当院Drの見解は、透析中止直後の見解ですが、へパリン増量で対処すると。それで、本当に何とかなるのであろうか。*

               ・ 低分子へパリン
                  「低分子へパリンとは、へパリンを低分子したもので、平均分子量5000程度です。へパリンと同様に血中のATV(アンチトロンビンV)と結合して、
                 Xa因子、Ua因子(トロンビン)に作用して血液の凝固を防ぎますが、その作用はXa因子の作用がほとんどで、Ua因子の作用は弱い。半減期はへ
                 パリンの約2倍の2〜4時間です。」  (http://cetaka.com/blood-clotting2/ からの引用)

               ・ アルガトロバン
                  「ヘパリンは、ATV(アンチトロンビンV)と結合することにより、Xa因子(トロンビン)の作用を阻害して、血液が凝固するのを防いでいる。アルガ
                                      トロバンは、直接にXa因子(トロンビン)の作用を阻害して、血液が凝固するのを防ぐ。その為、アルガトロバンは、ATV欠乏症(ATVを生まれつ
                                      きもっていない人)にも、抗凝固作用がある。ちなみに半減期は30分程。
                  保険適応は、ATV欠乏症または、ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)U型のみです。」  (http://cetaka.com/blood-clotting2/ からの引用)

                                        さて、いったいATV欠乏症とは、何%以下を言うのだろうか。
                  {最近のアルガトロバン試薬の効能には、「アンチトロンビンIII低下を伴う患者(アンチトロンビンIIIが正常の70%以下に低下し,
            かつ,ヘパリンナトリウム,ヘパリンカルシウムの使用では体外循環路内の凝血(残血)が改善しないと判断されたもの)」という項
            目が記載されているようです。}
              ( 
http://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00050585 を参照されたい。)

                      しかし、アルガトロバンは、HIT陽性透析患者に使用すると良い抗凝固剤でありますが、「
HIT抗体が陽性な患者に対して使用したとして、
                まともにコメントすると保険請求し
た使用量の平均3割が過剰投与で削られるようです。HIT抗体陽性の透析患者で血液回路が凝固する場合など明らか
                にアルガトロバンの適応のある場合はうまく書けばPCI
時の使用もすべて認められるようです。」とあり、透析病院では、慎重にならざるを得ない状況で
                あるようです。( http://www.radialist.com/page009.html より部分引用致しました。)

                                    *  私の場合でも、当院Drからは、仮にAT 70%以下で、へパリン(低分子へパリンを含む)での透析が不能?になっても使用しないと公言されている。
                 他医院のDrからも概ねアルガトロバンについては、ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)U型のみ使用可という認識であるようです。上記部分引用の
                 記述に合致している。

                  それでは、そうした場合の透析患者には、どのような抗凝固剤が使用されるかというと、商品名「フサン(別名メシル酸ナファモスタット)」を通常は、
                 使い透析をされるとか。
                  半減期は、概ね5〜8分位と記述され、透析患者の透析回路内のみで抗凝固剤として作用し、体内に入る前にその効力は、無くなると。稀に残って
                 体内に入った場合には、肝機能障害を発症する可能性があるようだと聞きました。(実際に患者を受け持つDrの話)
                  通常 4時間透析の場合は、フサン 80〜120mgをブドウ糖液 20mLで溶解して使用すると。その溶液を時間当たり 20〜30mg注入が普通。
                   仮に フサン 100mgを5%ブドウ糖液20mLにて溶解。その濃度は、100mg÷20mL=5mg/mL。時間当たり溶液30mg/hシリンジにて注入
                  するには、5mg/mL(フサン溶液濃度)×6ml/h(シリンジからの注入量)=30mg/hとなる。このように計算するのだと。
                   では、6時間透析をすると、30mg/h×6時間=180mg

               抗凝固剤は、その他にもあるようで、詳しくは、http://www.teikyo-jc.ac.jp/jyoho/periodical_pdf/journal2010_141-144.pdf を参照された 
              い。                              


            拙稿でありますが、http://jp2kik.web.fc2.com/heparin.html も参照されたい。

           

             

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