透析により除去すべきものとそうでないもの及びその除去不足による合併症についての覚書

              1.はじめに

                 私は、透析患者です。平成17年より透析をはじめ、これで、透析歴 7年目になります。
                 最初は、透析について、何ら知識も無く、ただただ、病院にお任せという状況でした。最近は、少し
                透析について目覚めたというか、自覚して透析に当たっております。

                 患者ですから、ドクターの領域を超えた事柄は、真に戒めなければなりませんが、透析について、
                知れば知るほど、その奥は深く、分からない事だらけであり、生兵法は、怪我の元と戒めております。

                 さて、透析では、いったい何を血液から除去しているのか、おおよその事は、毎月の血液検査にて
                知ってはいるものの、さて、どれだけの事を知っていれば、いいのか。甚だ心もとない状況かと思い
                ます。

                 以下の記述は、そうした自身の戒めの為にも知りえた事を書き留めておこうと記述しております。

              2.透析により除去すべきものとそうでないもの
                    
血液 血 球
(細胞)
白血球  







赤血球  
血小板  
血 漿
(液状)
(大)   ↓





分子量






↓(小)
コレステロール
(リポ蛋白)
LDL(悪玉)  
IDL  
HDL(善玉)  
蛋    白
(分子量1万〜百万)
免疫グロブリン IgM(分子量90万)
IgG(分子量16万)
IgA(分子量15万)
アルブミン(分子量66,000)
<有用蛋白>
α1―MG(分子量33,000)
去│
対血
象液
物透
質析
領│
β2−MG(分子量11,800)
ビタミン(分子量数千)
糖分(分子量数百)
尿素窒素・クレアチニン・尿酸<尿毒症物質>
(分子量数十〜数百)
電解質<Na・Ca・K・P・Cl> (分子量十数〜数十)
水分<H2O>

                           <注>@分子量の単位はダルトン(D)
                                A「アルブミン」と「α1−MG」の分子サイズの差は分子量ほどは大きくないため両者の分離は
                                困難であり、「α1−MG」を除去するということはアルブミンの損失もある程度生ずる。

                               B小分子量物質は分子量が「500ダルトン以下」、中分子量物質は分子量が「500〜5,000
                              ダルトン」、大分子量物質は分子量が「5,000ダルトン以上」のものを指す。
 
                                 尚、上記小分子量物質・中分子量物質・大分子量物質を改めて次の通り整理しておきます。
                                    1.小分子量物質
                                        水・ナトリウム・カリウム・無機リン・尿素・アルミニウム・マグネシウム・
                                        クレアチニン・尿酸・フェノール・ミオイノシトール・アンモニア・シュウ酸
                                        ・ポリアミン・グアニジン化合物・シアン類・ホモシステイン・水素イオン等
                                    2.中分子量物質
                                         ポリペプチド・ポリオール等
                                    3.大分子量物質
                                      〔低分子量蛋白(分子量10,000〜55,000)・アルブミンより小さな蛋白領域〕
                                       副甲状腺ホルモン・β2−MG・α1―MG・インスリン・プロラクチン・
                                       レニン・成長ホルモン・ガストリン・リボヌクレアーゼ等
                以上であります。

                                        透析にて除去すべき物質として、 ここでいう大分子量物質のなかに β2−MG・α1―MGがあり、これ等は、
                 普通の血液透析では、思ったほど除去できない物質であると言われております。
                   β2−MGに関する長期透析者に於ける合併症としては、下記に記述します事柄があるようです。
                                           ( 以下の記述は、透析二人会 HP上に記載されている事の転記である事をお断りしておきます。
                    更に詳しい事等お知りになりたい方は、そちらの HP を参照 下さい。 )
                                         
                   以下の記述以外にも、拙稿 透析アミロイドーシスについての記述も参照して頂ければ幸いです。
                  < アミロイド骨関節症 >
                   
                  長期透析患者が増加するにつれて新たな合併症として、骨関節症が大きな問題となってきており、
                 その中でもアミロイド沈着に関連した骨関節症、即ち手根管症候群・弾発指(ばね指)・多発性関節
                 痛・骨嚢腫・骨折等の「アミロイド骨関節症」と言われる新しい病態が出現してきました。
 
                  改めて整理しますと、「β2−MG」に由来するアミロイド繊維が沈着し、症状が出現する「アミロイド骨
                 関節症」別名「透析アミロイドーシス(「DRA」とも言います)」は、沈着した部位や症状によって、大きく
                 それぞれ固有の疾患名がつけられています。
                  @手関節に発症する「手根管症候群(CTS)」 平均発症期間は、透析開始後17年、20年以上では
                     100%
                  A脊椎に発症する「破壊性脊椎関節症」
                  B大小の骨に発症する「骨嚢胞」=手根骨、上腕骨頭、肩関節、股関節、膝関節が好発部位等です。

                 さらに、長期透析患者のアミロイド沈着は骨・関節部位にとどまらず、これだけが要因ではありませんが、
                内部実質臓器に及ぶ「透析アミロイドーシス」になることも解かってきました。
                 このアミロイドの構成成分は、通常の透析では除去しきれないβ2―マイクログロブリンであることは明ら
                かにされていますが、アミロイド沈着がなぜ骨・関節部位に発生するのかはまだ明らかにされていません。

                 透析患者の血清β2―マイクログロブリンの数値は、普通の人に比べ40〜50倍高い数値となることもあ
                ります。(β2―マイクログロブリン基準値;0.7〜2.0mg/l―透析患者の場合30mg/l以下が望ましい―)
                 この「アミロイド骨関節症」の代表的な症状は、手が痛くしびれ、手の平の筋肉がおちてくることが挙げられ
                ます。その治療としては、内視鏡手術で狭い手根管にたまったアミロイドを機械的に除去する方法があります。
                 その他には、透析時に「リクセル」という吸着装置を使用するやり方です。即ち、血液をこの吸着体の中を通
                していくと、血中にあるβ2―マイクログロブリンが表面にある受容体に付着して、きれいになって血液が戻りま
                す。その後、普通のダイアライザーを通って血液を身体に戻すわけです。
 
                 しかし、非常に高価なこの「リクセル」という吸着装置を予防に使うのは、保険適用の観点から、現時点難し
                いようです。 
                 また、「アミロイド骨関節症」をはじめ「透析アミロイドーシス」の発症のメカニズムや治療法はまだ詳細解明
                されていないこともあり、現時点ではその予防が極めて重要で、@十分量の透析の施行A生体適合性のよい
                透析膜の利用B透析液の清浄化(エンドトキシンフリーの透析液使用)CHDFへの移行等が推奨されている
                ところです。

                  尚、体内で作られたアミロイドは、関節周囲、消化管の壁、舌、皮膚等に沈着し、身体にとって異物として
                 存在するために、これを排除しようとして生体の防御細胞である「マクロファージ」と呼ばれる細胞が集まっ
                 て局所的な炎症(異物と「マクロファージ」が戦う戦場)を起こします。この「マクロファージ」がさまざまな組織
                 を破壊する「サイトカイン」と呼ばれる物質を周囲に放出するために、ときには痛みが起こります。関節周囲
                 の骨もこの放出された「サイトカイン」により部分的な破壊を受けます。抗生物質の効かないこの炎症を抑え
                 るためには副腎皮質ステロイドが有効な場合があります。当然のことながら、副腎皮質ステロイド薬は多くの
                 副作用があり、必ず主治医の先生の指示通りに服用することが肝心であると言われております。

                  尚、上記「β2−MG(マイクログロブりンもしくはミクログロブりン)」に関し、以下の点について覚えておく必要
                 があります。
                  「β2−MG」という物質は、赤血球やリンパ球で作られる生理的な物質であり、その発生を完全にストップさせ
                 ることは不可能と言われています。赤血球やリンパ球等により作られた「β2−MG」は、これらの細胞表面に付
                 着して存在するのですが、そこから離れたこの物質は体液中に広く分布することになります。

                  そして血中の「β2−MG」は、ほぼ100%が腎臓で処理されています。腎臓でのこの処理能力が低下するた
                 めに、腎機能正常者で血中濃度0.7〜2.0mg/lの「β2−MG」が、腎不全患者では30〜40mg/lと高い
                 値をとるにいたるようです。
                  <参考:リクセル(「β2-MG」吸着カラム)の適応症条件について>
                   1.手術または生検により、「β2−MG」によるアミロイド沈着が確認された場合
                   2.透析歴10年以上で、手根管開放術の既往がある場合
                   3.画像診断で骨のう胞像が認められた場合。
                    以上の項目が認められる場合に使用できる。但し、初回使用日から1年を限度とし、一旦治療終了後再燃
                   の場合はさらに1年を限度として使用可能となっているようでありますが、最近の情報で再度確認していただ
                   きたいと思っております。
                  以上が、透析二人会 HPの内容です。
                   
               極めて個人的な参考データでありますが、私が、血液透析をしていた時の「β2−MG」の簡易除去率,そして、血液
                               濾過透析での除去率については、拙稿  透析アミロイドーシス 内に記載してありますので、参考にして頂ければ、
              幸いです。
                                               
                                さて、α1―MGについては、医学書等でもあまり記述がなく、よく分かっていない物質のようでありましょう。
               ネットで調べましたが、次のような記述に出会えただけでした。

               「分子量が33000の低分子蛋白で、肝細胞や リンパ球で産生されていることから、免疫機構となんらかの係わりが
              推定される
ものの、その生理的意義はなお不明であるようです。
               血清α1-MGは腎機能低下を鋭敏に反映して増加し、肝疾患では逆にα1-MGが減少していることが多い(とくに肝
              硬変、肝癌時)ようです。
               分子量33000領域にある何らかの尿毒症性毒素の除去を評価する指標的な意味合いと捉えるべきものなのでしょ
              うか。よく分かっていない物質という評価でありましょう。それ程、透析除去に神経質になる必要はないのかもしれませ
              ん。」

               ところで、このα1―MGと分子量では相当違いがある有用アルブミンは、透析除去ダイアライザーを通すとα1−MG
              との分離が出来ないようで、α1―MGの除去と、同様の率でアルブミンも除去されるような印象を持ちました。詳しい事
              は、専門家の判断を仰がなければならないと思いますが、どうでしょうか。

                  5月7日の血液検査にて、自費で α1−Mg(アルファ1マイクログロブリン)の透析前、後の数値を出していただきました。
                              この検査は、透析に入る前の初期状況時、所謂血清α1-MGは腎機能低下を鋭敏に反映して増加するようであり、腎機
              能検査として、保険適用されるようであります。
              それ故、透析に入ってしまうと、保険が効かず、自己負担での実施となるようです。前後の検査で、約5000円程度でし
             た。

                              正確な除去率は、別の計算が必要なようですが、概ねの数値で十分でありますので、簡易な除去率を出してみました。

                  透析前 109.6mg/L 透析後 97.7mg/Lという結果でしたので、簡易な計算式は ( 109.6−97.7 )÷10
                             9.6≒0.1085766  除去率は、10.9% でした。確かに、β2−Mgよりは、簡易除去率は、相当低いようです。

                 このα1−Mgは、透析にて除去しなければならない物質の内では、分子量が最大で、その近くに分子量が弱冠大き目
                            のアルブミンという物質があります。これは、人体に有用なたんぱく質でありますが、α1−Mgとの分離が出来ないようで
                            一緒に除去されているようです。血液濾過透析では、残念ながら、このアルブミンも弱冠抜ける傾向があるようです。

                このアルブミンが、私の場合、5時間透析で、どれだけ抜けているのか知りたくて、自費にて検査をしてもらいました。

                おそらく、血液透析でした場合は、アルブミンの抜けは、もっと少なく、もしかしたら、1%以下位かと推察いたします。
 
              私のドライウエウトは、80.8Kg。血液総量は、概ね体重の13分の1程度とすれば、80.8÷13≒6.2L位でしょうか。
               この血液中にアルブミンは、平成24(2012)年3月26日の検査では、3.9g/dlでありましたから、6.2L×10=62
            dl。私の人体にある血中アルブミン総量は、3.9×62=241.8gでしょうか。α1−MGと同様の抜け具合だと仮定した場
            合、透析にてアルブミンが 241.8g×0.109≒26.4g相当、毎回体内から除去されている見当になりはすまいか。本
            当のところは、もう少し低いのかも知れません。この数値は、あくまでα1−MGの簡易除去率に準拠した場合のアルブミン
            値の推定除去量を示した物に過ぎないからです。

             人の体は、よくしたものでアルブミンは、足りなくなると即座に肝臓にて原料のアミノ酸を用いて、産出されるとか。除去量
            に産出量が追いついている内は、血中アルブミンは、透析にて除去されても何とかなっていましょうが、肝臓にての産出にも
            限度がありましょう。本来なら血液検査のアルブミン値は 4.0g/dl以上が望ましいのですが、私の場合は、その値は、夢
            のまた夢でありましょう。食事のたんぱく質摂取量もかなり多くしているつもりなのですが、アルブミン値は、4.0g/dl以下の
            数値で推移しているのが現状です。( 平成24年5月12日 記述 )

             参考までに、アルブミン値が、4.0g/dlであった時、私の体内の血清アルブミン総量は、4.0g/dl×62dl=248gでしょ
            うか。現在の数値からみれば、その差は、6.2gであり、誤差の内と言ってしまえばそれまででしょう。

             最近、私の透析を受け持っています透析室での過去のHDFのデータが残っていたようで、幸いにも頂けました。

             当透析室では、HDF透析に機器を入れ替えておりまして、その当時の透析データを学会に発表されておりました。そのデータ
            を御提供頂けましたので、併記させて頂きます。

             その記録は、今から数年前のことかと、丁度当院の透析を血液透析から血液濾過透析へと転換した直後であったのではない
            でしょうか。

             目的としては、V型ダイアライザー FX−S180 PES−195α APS−18E 三種の性能評価であり、48L 前希釈on-
            line HDFにおける溶質除去性能の比較検討であったようです。

             対象透析患者は、安定期維持透析患者で男性 8名 平均年齢 59.8歳 平均透析歴 13年に対し、3種類のダイアラ
            イザーを用い、QB 200ml/min  QD 500ml/min   QF 200ml/min条件にて2週間クロスオーバーし、BUN Cr UA iPのクリ
            アランス、除去率、更に低分子量たんぱくである B2−MG・α1−MGのクリアランス、除去量、クリアスペース、そしてアルブ
            ミン漏出量を測定されていた。以下私は、 B2−MG・α1−MGのクリアランス、除去量、クリアスペース、そしてアルブミン漏
            出量のみのデータを取り扱いさせて頂きます。が、除去量については、この数値がどのようにして出されているのか見当を加
            えておりませんし、発表原稿より抜き出して利用させて頂いているだけであります。(特に透析時間は、記載されておりません
            でしたが 4時間である事を確認いたしております。 また、アルブミン漏出量は、各被験者のコンソール近くの排出透析液より
            部分抽出した量より知りえた漏出量の平均値であるようです。)

             ダイアライザー  B2−MGの除去率 B2−MG除去量 α1−MGの除去率 α1−MG除去量 アルブミン漏出量
             FX−S180      78.4%     205.8mg/L     27.2%    166.1mg/L     5.51 g
             PES−19Sα     78.2       209.3          22.0        131.4(平均16.4カ)  1.78
             APS−18E      78.6              203.4          24.6      148.6           2.42

             このデータから推察しうるにα1−MGの除去量とアルブミン漏出量の間には、明らかな因果関係があるように思える。
             α1−MGの除去量が多ければ、アルブミン漏出量も多く、其の逆も言えるのではないか。それは、α1−MGとアルブミン
            の分子量には、相当の差があるようでありますが、ダイアライザーでは分離できないようであり、α1−MGと一緒に抜ける
            傾向にあるからではないだろうかと考察されておりました。

             それ故、各ダイアライザーには、α1−MGの抜け具合に微妙な違いがあり、其の違いが、アルブミン漏出量に影響して
            くるのでありましょうか。

             私自身(透析歴7年目)のB2−MG・α1−MGの除去量は調べてありますので、併せて記載しておきます。( ともに5時間
            透析 QB 280ml/min  QD 600ml/min  補液10L/h 前希釈 on-line HDF の結果です。)

                            ダイアライザー  B2−MGの除去率 B2−MG除去量 α1−MGの除去率 α1−MG除去量
             PES−25SEα 簡易除去率80.7%  15.9μg/ml                 検査せず  
             MFX−25s            検査せず         簡易除去率10.9%  11.9mg/L  以上であります。

             当医院での性能比較は、残念ではありますが、各被験者の体内アルブミン総量に対する平均値漏出量が、8人の被験者
            の平均値体内アルブミン量の何%に当たるのであるのかは、分からないようであり、そうした事が分かれば、α1−MGの
            除去率より、アルブミン漏出量も推定出来るような気がしましたので、惜しいなあという気持ちであります。

             また、私に関するα1−MGの除去量は、11.9であり、数年前の当院での被験者の除去量は、平均16.4であるかと、そうし
            た点から鑑みても私のアルブミンの抜け量は、微々たる量ではないかと推測いたします。個人データは、5時間透析、病院
            データは、4時間透析ですので、単純には比較出来ないかも知れません。が、4時間で、1.78g程度のアルブミンの漏出で
            あれば、私個人の漏出量も、2g弱でありましょうか。
             一番分かりやすい検査は、アルブミン値の透析前後を調べて貰うことではないでしょうか。そうすれば、自ずと透析中の概
            ねの除去量は分かろうというものでしょう。

             後日、アルブミン値の透析前後の数値を出して貰いましたが、透析途中で、私が食事を取りましたので、正確な数値は
            分かりませんでした。次回、透析途中の食事をしないで、数値を出して頂けるように交渉中であります。

                                       前     後
                      H24/6/18  アルブミン値    3.8          4.0        どちらも透析中に、食事をとりました。本当に、すぐアルブ
                                         H24/7/23        〃            3.7          4.2   ミンは、補充されたのでしょうか。食事 500g分量。血液中の
                                              水分除去により、アルブミン値が上昇したとも取れますが・・。

                                    <   二次性副甲状腺機能亢進症について >
                   副甲状腺は、首にある甲状腺の脇、上下左右に計4個あります。
                   慢性腎不全では、副甲状腺から副甲状腺ホルモン(「PTH」)がたくさん分泌されます。

                   この病気が長く続くと、骨はどんどん溶け出してもろくなる「線維性骨炎」にかかってしまいます。また、
                  この病気がひどくなると、骨や関節の痛み・骨折・筋力の低下・かゆみ等の症状が起こってきます。
                   従って、これらの症状が出る前に治療を始める必要があります。
                   尚、副甲状腺ホルモ ンの分泌状況を調べる血液検査(透析前)には、感度が良く特異性のあること
                  から「intact―PTH」という指標が現在多く使われています。(健常者の基準値;10〜65pg/ml)
                   <人工透析患者の目標値は、最近では、「60〜240pg/ml」(透析前)> であろうと言われているようで
                  す。( 詳しくは 透析患者における慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常の診療ガイドラインの要約と附則
                  を参照下さい。 )

                   私は、透析導入から1ないし2年間は、まったく病院まかせの透析患者でしたから、透析患者の適正なi-P
                                       TH値を知りませんでした。記録に控えたデータでいえば、平成18年8月以前の事は、分かりかねますが、8月
                  より毎月のデータは、29、17、22、18,21、34,38,48,50,49、72,59,52,37,63,53と平成19
                  年11月までの1年と4ヶ月間は、以上の結果でありました。言ってみれば、健康な人の i-PTH値であったよう
                  です。

                   この長期に渡る期間、病院側からは、何らコメントもなかったので、私は、これが普通の数値であろうと気に
                  も留めずいました。ある時、その病院の検査技師さんにこの数値の患者の適正値を何となく尋ねたようです。
                   そこで、人工透析患者の目標値を教えて貰い、自身の数値を技師さんに伝えた所、非常に驚いて見えた事
                  を今でも覚えております。直ぐに、i-PTHに関する薬の使用説明書を技師さんから貰い読んでみて びっくり 何
                  と、薬の停止基準に合致しているではありませんか。(このことから、技師さん、ナースさん、ドクターの間には、
                  患者個人の細かいデータの共有はないという事を知りました。また、ドクターといえども、個人のそうした細かい
                  データのチェックは、患者の多い透析専門病院では、あまりなされないのではという感覚を持ちえました。全ての
                  透析専門病院がそうだとは思いませんが、私が、以前にいた透析専門病院はそうなのかなという印象が強いで
                  す。)

                   おそらく、透析導入 3ヶ月間の某市民病院の透析実施データを替えず、投薬等が行われていたように思えまし
                  た。
                   それ以後、血液検査の見方やら、透析に関する本を片っ端から読み、自身の脳へ、知識を急速充電していき
                  ました。そして、現在の私があるという訳です。知らない事は、恐ろしい事であると本心から思い、透析に関する
                  治療方法についてのみ、患者から何か言わないと特段の変更やら改善はなされないのではないかという懐疑的
                  な心も有するようになっていることは、どうすることも出来なくなってしまいました。弱冠疑いの目を持つようにな
                  ったきっかけでもありました。いったい、透析導入時では、i-PTH値は、いくつであったのだろうか、リンの値は、
                  カルシュウム値は、今となっては、取り返しのつかない状況を長い間続けてきたのではないかという後悔の念で
                  溢れています。が、どうしようもないことなのでしょう。
                  
                   @骨や関節の破壊(骨折・骨痛・関節痛・腱の骨からの剥離等)
                     PTHが増加すると骨からカルシウムを吸収する(削る)結果、骨折しやすくなります。日常生活の中
                   のひょっとした出来事で骨が折れてしまい(病的骨折)、活動が大きく制限されます。また、関節が痛く
                   なり、動かせる範囲が狭くなることもあります。あるいは、アキレス腱や大腿、膝の腱が痛むことも多く、
                   時には筋肉と骨をつないで筋肉の動きを骨に伝える腱が切れてしまい、全く歩けなくなってしまう(腱断
                   裂)ことさえあるのです。
                 A異所性石灰化(末梢循環障害・動脈硬化等)
                    血液中のリンが増えればPTHがたくさん作られ、また血中カルシウムが不足しても同様にPTHが増え、
                   リンの高い状態が持続すればますますPTHの産生を促しますので、放っておくと臓器や組織にカルシウ
                   ムとリンがくっつく現象が起きます。血管の壁が固くなって動脈硬化を起こしたり、心臓の弁にくっついて
                   弁膜症を引き起こすなど、こうした異所性石灰化は、生命予後を短縮する要因となります。また、関節の
                   中が石灰化すれば関節炎から関節は痛み、腫れあがり、動かすこともままならなくなります。眼の「しろ目
                   」に溜まると、結膜炎を起こして「しろ目」が真っ赤に充血します。皮膚の下に溜まると、痒みの原因になり
                   ます。
                 B貧血の増悪
                    骨を壊す過程でPTHは血液を造る場所である骨髄も削り取っていきます。また、PTHは赤血球の卵が
                   赤血球に育つのを妨げます。さらに、赤血球の壁を脆くして赤血球の寿命を短くします。これらはすべて貧
                   血を招く原因になり、エリスロポエチンを注射しても効かない貧血の原因の一つとされています。
                 C神経障害
                    神経には信号が流され、様々な情報が伝達されますが、PTHはこの信号の流れを妨げる作用があります。
                   手足のだるさや神経の中を信号が流れる速度が遅くなる異常、さらには脳波・脳神経系の異常にもPTHの
                   関与が疑われています。
                 D心筋障害
                    PTHは心臓にも作用します。異所性石灰化以外にもPTHそのものが高いと、脈拍が増えるとか、心臓の
                   筋肉(心筋)に変化が起きて心臓を収縮させる力が衰えるとかの影響が疑われます。
                 E頑固な痒み
                    人工透析患者共通の悩みの一つである痒みは、原因は多種多様ですが、PTHの過剰もその原因の一
                   つです。特に頑固で高度な痒みの原因になることが知られています。これは、副甲状腺を手術で取り去ると、
                   頑固な痒みが無くなることで裏付けられています。
                 F性機能障害の進行 
                    PTHは性機能障害にも関係しています。インポテンツ、月経異常、性欲低下等の原因の一部にPTHの
                   増加があります。これらも副甲状腺を外科的に除去することで改善されることがあります。
                 Gその他(免疫力低下等)
                    人工透析患者にみられる脂質(中性脂肪やコレステロール)の異常、食後血糖値の過度の上昇、多くの
                   ホルモンの異常等、多岐に亘る障害にもPTHの増加が関係していることが解っています。また、人工透析
                   患者は感染症や癌にかかりやすいと言われていますが、この原因となる免疫力の低下にもPTHの増加が
                   関与しています。
                    PTHの働きを受けとる受容体が骨以外の多くの臓器に分布していて、PTHの増加が以上のように広範
                   な影響を及ぼすことになるのです。

                    以上の内容は、全腎協発行の「ぜんじんきょうNO.201(2004年1月6日発行)」の記事に基づいて記
                   述したことを付け加えておきます。

                                        まったく個人的な事柄ですが、透析には至っておりませんでしたが、腎臓が悪くなり、腎不全の一歩手前の
                 状況下で、頭を支えていた首が痛くなり、整形外科で、緊急に注射( 注射液が、何であったのか聞きません
                 でしたが、もしかすると 副腎皮質ステロイド系の液であったかも。)をしていただくとたちまち、痛みが無くなっ
                 たという事もありました。その時は、以前の追突事故の後遺症かな位に思っていました。身体障害者 4級の
                 頃、左右の足の膝関節が痛くなるという事も起こりました。その時は、足裏に特殊な上敷きを整形外科で作っ
                 て頂き、それを使用しているとそのうち痛まなくなった事がありました。
                  また、その時、上記2事例で、整形外科で、レントゲンを取って頂き、骨がすっきり写らない(骨の石灰化)等
                 指摘され、腎臓が悪いからでしょうという言い方をされた覚えがあります。やはり、腎臓が、異常を起こし始め
                 た時から、何らかの代謝異常が、起こっていたと認めざるをえないことだらけのようだと今だから思えることな
                 のですが・・・・。その後は、一度も上記の症状は、起こっておりません。

                  しかし、透析を始めてからは、腎性貧血の症状は、治まり、エスポ(腎臓から出される造血ホルモンの代用物)
                 もよく効いて、以前は、週3回 1500単位でありましたが、週3回 750単位に下げてもいいようになり、1時期 
                 は、週 1回(月)のみという時期もありましたが、現在は、週2回(月、金)の750単位となっております。( 平成
                 24年5月現在 ) しかし、最近、腎臓に結石かという診断が下されましたが、よくよく調べると、これは、局所性
                 石灰化(腎動脈の動脈硬化)のようでありました。おそらく、透析以前からの積み重ねの成せる仕業なのでしょう
                 か。怖いものを感じます。

                 高カリウム血症について

                                         軽度の高カリウム血症では無症状であることが多いですが、比較的高度の高カリウム血症では、
                                      「口のまわりがしびれる」「胸が苦しい」「体がだるい」「足がつる」「かゆみ」「不安感」などの症状が出
                                      現します。さらに高カリウム血症が高度になると、急速に心臓に関する症状(例えば徐脈・不整脈)が
                                      出現し、やがては死に至る大変怖い合併症です。

                 まだまだ、長期透析患者には、避けられない合併症もあろうかと考えられます。その都度、記述していく予定
                でいます。
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