透析患者の常識 非常識 その2

         透析病院の患者の常識 非常識の二つ目は、ドライウェイトと、水分管理に関することである。
         このドライウェイトは、透析患者が現時点で生き延びる為のベスト体重とドクターが決めた患者用体重と理解すると
        分かりやすい。

         このドライウェイトの体重を基に、透析当日 患者の体重を量り、ドライウェイトと当日の体重の差、当然増えた体重
        分を除水(透析用語で、ドライウェイトから増えた体重分を透析中に水分量として体内から取り除くこと。)するのである。
         透析外のドクターの中には、この取り除く水分量を、除水と言わず脱水と表現する方もあるようです。

         正確には、その透析中に食事をすれば、その食事分(重さで置き換えるのであるが)も除水量の対象に含まれるの
        である。

         普通、透析は、一週間に、一日おき2回と、二日おき一回。これの繰り返しであり、一日おきの透析日のドライウェイト
        からの増加は、3%未満、二日おきの場合は、5%未満が理想でしょうか。これくらいの増加であれば、3ないし4時間の
        透析で、体に負担をかけず、除水することが可能となるはずです。
         私の例で言えば、ドライ 80Kg 一日おきの透析時なら、2.4Kg以内の体重増加であれば透析が楽になり、二日お
        きの透析では、4Kgの体重増加なら可とするということでしょうか。

         ドライウェイトが、60Kgの方は、一日おき 1.8Kg。二日おきでは、3Kgとなり、患者により、それぞれ適切なドライウ
        ェイトが設定されているようです。

         しかし、徐水量が、0.6ℓ/時以上だと、血管外の細胞等にある水分が、血管へ戻ってくる速度と合わなくなり、血圧低
        下の要因にもなるようで、二日おきだろうと、一日おきだろうと0.6ℓ/時以上の徐水速度にならない体重増加に努めた
        方が無難なのではなかろうかとは思っています。それ故、5時間透析であれば、3kgの増加(透析中の食事量も含めて)
        以内であれば、可。4時間透析であれば、2.4kg以内でありましょうか。やはり、長い時間の透析の方が、多少透析に
        余裕が出来、患者本人にもやさしい透析となりましょうし、除去しなくてはいけない物質もより多く除去できるのではなか
        ろうかと推察いたします。

         中には、ドライウェイトを大幅に超えて、透析にみえる患者の方も無きにしもあらず。当然超えた分の体重分は、体内
        の水分で調節することになります。ところが、決められた透析時間内にその増えた体重分の水分を抜かなければならず、
        時間当たりの除水量が大きくなり、困った事が、患者本人に起こることが、多々あります。それは、透析中の急激な血圧
        低下であったり、筋肉の痙攣として表れたり、ひどい時には、意識が無くなり、命にかかわる症状を呈することも起こりえ
        ます。
         私も、そうした現場に遭遇したことが、一度や二度ではありません。ベテランのナースさんのなかには、経験上でしょう
        か、寝ているのか意識不明なのかを鋭く嗅ぎ付ける能力を備えたナースさんがいることも知っています。めったにはいな
        いと思いますが・・・。そうしたナースさんがいる透析専門病院は、心強いと思わざるを得ません。

         さて、こうした異常な体重増加の常習患者さんには、口を酸っぱくしていけないと脅したり、すかしたりされますが、一向
        に改まらないのが、人の常。上記のような事が、透析中起こりますので、患者さんから透析中止の哀願言葉が出てきます。
        それは透析を続ければ、苦しいからでしょうが・・。それで、水分を取りきらず体内に残すと、少しずつではありますが、ボ
        デイブローのように効いて来ます。結局、心臓が水を含んで肥大化し、心不全がいつ起こっても不思議ではない状態にな
        っていくのかも知れません。肺には、水が、溜まるようになりますし、体全体が水を含み、皮膚を押すと、押した所だけいつ
        までも凹んだ状態を呈するようになるという。それを浮腫というそうですが・・。

         また、こうした異常な体重増の常習患者さんのなかには、水分量を減らさず、食事の量を減らすことで体重増加を減らそ
        うとする方もあるやに聞く。食事を減らすことは、筋肉の減少に繋がり、死を早めこそすれ、何らの解決策にもなりません。
         こうした非常識な患者さんがいるかと思うと、透析歴30年以上の患者さんの何と水分管理が徹底されていることか。食事
        にも気をつけ、よく召し上がっていられるとか。一昔前の透析機器は、性能が悪く、こうした方だけが、長く生きることが、で
        きたからでしょう。これが、常識といえるのではないでしょうか。

         このドライウェイトの変更の目安は、レントゲンでの心胸比(これは、ドライウェイトが適切かどうかを判断する有力な判断
        材料でしょう。)であり、透析後の声枯れ(これは、除水のし過ぎの判断に用いられます。)であり、透析中の痙攣(除水のし
        過ぎ)も目安になります。また、よく高い峠に上がり、下がってくるとしばらく耳鳴りがする経験をされた方は多いと思います
        が、しばらくすれば直ります。直らなければ、鼻と口を塞いで、耳の方に圧をかければ、やがて治まります。ところが、除水
        が、きつ過ぎるといつまで経っても、治まりません。一週間でも治まらないことがあります。耳鼻科にかかると、透析患者さ
        んですね。脱水のし過ぎです。あっさりしたものです。透析専門病院で、こうした耳鳴り症状を訴えても、このような明快な
        返答は返ってきませんでした・・・。
         かように、患者にとってドライウェイトが、適切でないといろいろな症状を呈します。透析病院以外のドクターの方が、明快
        な回答をしていただける場合もあり、よくよく患者と接する透析にかかわるナースさんは、患者のこうした症状を良く捉え、
        ドクターに伝えていただけると透析患者は、助かります。

         除水のし過ぎの反対、除水不足の場合、すぐには患者には、分からない場合が多いのではと危惧します。いったい何を
        もって、毎回の透析で、不足と判定できるのでしょうか?患者に痛みとか、変調があれば分かりますが、不足の場合は、特
        に患者サイドでは、気づく事が難しいのではと思いますが・・・。違いますでしょうか?


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