へパリン起因性血小板減少症(HIT)について

       1.はじめに
          へパリン等を使う透析患者のなかには、僅かな頻度(1%カ)で発症するという。「透析HIT の発症は,ヘパリンによる透析導入期に集中している.
          しかし,低分子ヘパリン透析の場合にはHIT の発生率は低いが,発症するHIT は通常のヘパリンと同様であるとされているが, エビデンスに乏しい。
          透析導入期HITでは、へパリン透析が連日ではなく間歇的に行われてる場合,血小板減少率やそのタイミングが通常の発症日よりずれが起こるため
         に,実際より低スコアに留まっている場合もある。
          間欠透析では,HIT による血小板減少が5〜6 回目の透析時に発見されることが多く,このため血小板減少のタイミングも,7〜30 日と幅広く対応するこ
         とが勧められている。」と。( https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsdt/49/5/49_323/_pdf からの抜粋)

                      私は、へパリン起因性血小板減少症(HIT)なる症状は、透析導入期に集中的に発症するのであって、導入期を過ぎてからでも後発的に発症するのだろ
         うかと思っていた。ところが、平成30(2018)年1月22日(月)当医院Drから、起こり得る事柄であるような話しを聞いた。びっくりであります。
          他医院の某Drにも問い合わせましたが、起こり得るという認識でしたが、実際には、その方の医院においては、未だ未体験とのこと。むしろ、AT減少の
         方が多いとの認識でありました。

          心配していただける事はありがたいのですが、それならきっちり「HIT」でないとかそうであろうという検査をして頂きたいものと内心思いました。

       2.現在の「HIT」検査の現状
          詳しい事は、http://drmagician.exblog.jp/18335440/ を参照されたい。

          各種HIT検査法
            (1) IgG/IgA/IgM型抗体検出EIA:感度>95%,特異度74-77% ・・・・・・・http://test-guide.srl.info/hachioji/test/detail/008570709  参照
            (2) IgG型抗体検出EIA:感度98-100%,特異度89-90%
            (3) セロトニン遊離試験:感度>95%,特異度>95%
            (4) HIT抗体による血小板活性化試験:感度80%,特異度>90%

          「本邦で実際に主に行われている検査はIgG/IgA/IgM型抗体検出EIAであり,本邦で一部の施設でしか実施できないIgG型抗体検出EIAに比して特異性が
         劣る。」と。
                      (3)の検査は、欧米では広く実施されている検査であるようですが、日本では、保険診療扱いでないとか。(4)の検査も一部の施設でしか出来ないかも知
         れません。よく私には分りません。本邦に於いては、HIT検査の実情は、このようであるようで、確実な検査体制が取れていないかのようです。
          透析施設に於いては、上級に位置する大病院の実情がこのようであれば、まったく検査するような意識は皆無のようになるのは必定でありましょうか。
          欧米と比べ、相当遅れていると推測致しました。
                     
      3.へパリン投与とHIT
         上記 PDFファイルからの長い引用です。
         「未分画ヘパリンはHITを最も発症しやすい.ダルテパリン(フラグミン®)などの低分子ヘパリンでも発症することが知られ,最近ではペンタサッカライドである
        フォンダパリヌクス(アリクストラ®)でもHIT発症の報告がある.しかし,一方でフォンダパリヌクスをHIT治療薬として利用した際に有用であるとの報告もあり
        ォンダパリヌクスに関する理解はいまだ明確な結論を得るに至っていない.

         HIT抗体は一過性にのみ存在し,ヘパリン投与中止後,HIT抗体は平均100日程度で陰性化することが明らかになっている.これは,ヘパリン投与が中止され
        るとPF4の構造変化が起こらなくなり,抗原が体内に存在しなくなるため,急速に抗体価が低下するものと推測されている.このことから,逆にHIT抗体が存在し
        ている時期であるヘパリン最終投与後1ヶ月間は血栓塞栓症発症のハイリスク期間となる.

         また,ヘパリン中止後,しばらくしてから(数日後に)発症する,あるいは数週間症状が遷延する遅延発症型が存在する.これらの症例の場合,HIT抗体の活性
        化能が非常に強く,症状が重篤化することも少なくなく,これらの症例のHIT抗体はしばしばex vivoアッセイでヘパリン非存在下でも血小板を活性化させうる.直
        近(少なくとも100日以内)のヘパリン投与によりHIT抗体を保持している患者に,ヘパリン再投与を行った場合,1日以内に急激に発症する急速発症型が存在する.
        HIT抗体存在時にヘパリン大量静注を行うと,5-30分後に発熱,悪寒,呼吸困難,胸痛,頻脈,悪心,嘔吐などを伴う強い全身症状と急激な血小板減少が起こる
        ことがある。」と。

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