ATV(最近は、ATと記述される。アンチトロンビン)について

       1.はじめに
          先天性AT欠乏症・後発AT欠乏症については、1992年の調査結果では、以下のように記述されている。
          「先天性ATIII欠乏患者およびATIII低下患者で、通常のヘパリン透析が困難な患者は、1992年の全国調査では、調査された患者60,910人のうち、
         前者が5人、後者が84人であった。これは全透析患者の約0.15%に該当すると推測される。」と。平成30年現在からすれば、20年前の事柄であり
         ましょう。( 平成10年3月 別冊 日本透析医会雑誌 より抜粋 http://www.touseki-ikai.or.jp/htm/07_manual/doc/man.pdf 参照 )
                      上記推定統計数は、私が知りえた唯一の推定数値であります。

          ATに関わる透析困難者は、全透析患者の約0.15%に該当すると推測されるように極めて稀な病態でありましょう。そして、少ないながら先天性AT
         患者より若干ATIII低下患者数の方が、多い事は、明記しておく必要がありましょう。
          私が信頼している某所のDrからも同様な事をご教示して頂いております。

          更に「今から10年前の全透析患者推定人数は、28万2622人」とか。(http://docs.jsdt.or.jp/overview/pdf2009/2008all.pdf 参照)10年間で5倍
         弱増加しているようです。更に2015(平成27年)年末では、「全透析患者推定数は、32万4986人とか。」平成20年より更に約5万人強増加した事
         になりましょうか。(http://docs.jsdt.or.jp/overview/pdf2016/2015all.pdf  参照)

          仮に平成20年の全透析患者推定数の約0.15%が何らかのATV欠乏症であるとすれば、その推定数は、28万2622×0.0015≒424人でし
         ょうか。平成27年では、約487人か。全国でです。全国での推定透析AT欠乏者を都道府県別にすれば、1県あたり約10人居るか居ないかに相当し
         ましょうか。あくまで類推ではあります。

          県別にみてもAT欠乏による透析困難者は、通常透析患者に比べても遙かに少なく、稀な症状で有るが故に、県別個別透析専門病院当たりのAT欠
         乏による透析困難患者は、1人居るか居ないかの状況と推察致しますが、どうでありましょうか。
          さて、個別の透析病院では、こうした稀なケースの透析困難患者の扱いはどうなのでありましょう。
          個別の透析専門病院にすれば、一番手っ取り早い解決方法は、更に上級の提携病院に送致する事でしょうか。良心的な透析専門病院で有れば、個
         別に対応されるでしょう。通常の透析業務以外の別の問題を抱えて。

          こうした個別対応には、何らかのAT欠乏透析患者であれば、通常へパリン(低分子へパリンを含む)では、透析が不能状態となるようです。抗凝固薬
         を替えなければ対応出来ないとか。ところが、替えた抗凝固薬は、へパリンと比べバカ高い。100倍程度?違いがあるかのようです。

          しかし、この高い抗凝固薬は、へパリンと同様人工腎臓「1」で算定する事になっているとか。(国の方針)
          弐重・三重の診療点数チェックが行われ、算定した全額が支払われず、3割カット等も起こっているとも聞く。
          少数であるが故に、弱者の中の弱者であるが故の国(厚労省等)の対応ではなかろうか。こうした事は、費用対効果とか、多くの人の為になる事は、役
         所的には、実施し易い等いろいろの目論見で差配されているかのようです。

       2.先天性AT欠乏症に               
         先天性凝固障害の分子病態に関する研究としては、森下および保健学科の学生らを中心に、凝固因子および凝固阻止因子の分子異常について幅
        広く研究しています。森下は慶応大学村田満教授を代表とする厚労科研「血液凝固異常症等に関する研究」の「特発性血栓症/先天性血栓性素因」
        サブグループのグループリーダーとして、先天性血栓性素因を「指定難病」に認定することを目指し、診断基準ならびに重症度分類の作成を行い、昨
        年10月に厚労省に申請いたしました。今後、作成した診断基準、重症度分類をさらに検討した後、日本血栓止血学会を通して全国に発信したいと考え
        ております。
         さて、先天性血栓性素因の研究面としては、以前から継続しておりますアンチトロンビン(AT)、プロテインC(PC)、プロテインS(PS)などの凝固阻止因子
        欠乏症の症例の遺伝子解析を行い、その変異部位の同定を行っています。当研究室が行った141家系204症例の遺伝子解析の結果を図に示します。                 

表と変異の割合の円グラフ

             ( http://www.3nai.jp/index_php/class/research02/index.html  より引用 )

      3.後発AT欠乏症
         1999年発表の論文より ( https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsth1990/10/1/10_1_36/_pdf 参照)
         「ATVが70%以下では、回路内凝血トラブルが生じる。この場合は、ヘパリンの増量は無効で、ATV濃縮製剤による補充が行われていた。しかし、安全な
        抗トロンビン剤が開発され、ATV濃縮製剤+ヘパリンに代わって、アルガトロバンが用いられている。PMNエラスターゼは、透析器の人工膜面上で白血球か
        ら放出され、一部はα1アンチトリプシンで中和されるが、そのプロテアーゼ(タンパク質分解酵素・・私の注)作用によりATVが失活、凝固系が活性化されト
        ロンビンが生成される。
         また、ヘパリンの存在下でATVの失活が増強することから、回路内に凝血が発生する。」と。

         上記の内容から、後発AT欠乏症のAT基準は、70%以下となりましょうか。個々人でも、その発症形態に個人差があるのでしょう。早くから出る患者では、
        AT値 70%近辺から回路内凝血トラブルとなりましょうか。70%を大きく下回らないと(50%以下カ)トラブルが起こらない患者もいましょうか。トラブルとは、
        おそらく透析困難或いは不能と言い換えてもいいのかも知れません。

         全ての透析患者がそのようになるのではなく、先述した通り、1992年調査では、全透析患者の約0.15%に該当すると推測されるように、極めて稀な症状
        かと。そして、そのほとんどが、後発AT欠乏症患者でありましょう。

         とすれば、私の場合は、AT値は、70%前後か低い時には、60%台を呈しています。回路内凝血は、今から6年前より発症していますが、トラブルと呼ぶ
        べき症状は、昨年の年末の2回と年が明けた平成30年1月の1回、計 3回であります。(平成30年1月末現在)

                    *  ATは、アルブミンと同等の大きさであるようです。「ATIIIはアルブミンと分子量がほぼ同じであること、また一般に透析の前後でATIII量にほとんど変化が
          ないことから、透析によって除去されないと考えられる。」と。(http://www.cslbehring.co.jp/docs/836/438/IFAT500&1500_JP.pdf より抜粋)ではあります
          が、私が使用しているダイアライザにては、少量のアルブミンは、除去されていますから、まったく透析にて変化しないとは言い切れないのでは・・・。*

         まだまだトラブルが頻発する段階には至っていないかと。しかし、やがて、AT値が極度に低下し、凝血トラブルが頻発するようになる可能性もありましょうか。
        あくまで、素人判断に過ぎませんが・・・・。
                    当院Drは、後発AT欠乏症の透析患者については、未体験でありましょうし、何故凝血が起こるのか?「原因は、不明とされています。」
         それまでは、へパリン透析で凌いでいくしかない。透析不能状態が頻発するようになった時、どちらかの抗トロンビン剤を私自身選択する必要に迫られるで
        しょう。その様になった場合は、私の寿命と相談になりましょうか。長いと私が判断した時には、Drからどのような抗トロンビン剤使用を告げられようと、私が選
        んだ薬をと激しく抵抗するでしょう。あらゆる機関と相談し、争うことにもなりましょうか。

      4.稀なAT欠乏症透析患者への透析抗トロンビン剤について
         現在は、2通り。
          @ フサン(メシル酸ナファモスタット)・・・・人工腎臓「I」で算定する。          
            ・フサンに於ける問題点
             https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsicm/15/3/15_3_345/_pdf を参照されたい。2008年発表。(今から10年程前)
             透析中の回路内に結晶が出現する可能性がある。その結晶が、体内に入れば、肝臓を攻撃するとか。

             https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsdt1985/26/7/26_7_1255/_article/-char/ja/ 1993年
             透析膜によっては、フサンにおいても凝血を起こすとか。

           ・フサンの使用例 
            「手術後や消化管出血時等、出血の危険が高い時に使用されます。」 ( http://www.hakuyukai.jp/drug/drug2009.html より引用 )

            *  稀なケースでありますから、おそらく現在、上級の透析病院・透析専門病院では、フサン使用で対処される可能性が高いのでしょう。
              下記の抗トロンビン剤は、薬価点数が、バカ高いが故でありましょう。良心的な透析病院では、下記の抗トロンビン剤で、透析を施術されているようで
             すが・・・・・。*

         A アルガトロバン          ・・・・ 人工腎臓「I」で算定する。     
           ・アルガトロバンに於ける問題点と使用例 
            「 選択的にトロンビンと結合し、フィブリンの生成や血小板凝集を阻害します。アンチトロンビンV(凝固阻止物質)欠乏症、ヘパリン起因性血小板減少
            症に有効といわれています。半減期は30〜40分と長く出血のある人には使用されません。」 ( http://www.hakuyukai.jp/drug/drug2009.html より引用 )

            しかし、アルガトロバンには、中和剤がないとか。

           * 稀な透析患者でありますから、インターネット上でも、某透析病院の看護士の方からの以下の投稿もあるようです。
              「AT欠乏症透析患者さんらしき方への抗凝固剤(未分画へパリン・低分子ヘパリン)についての質問。
             その回答として、「へパリンは血中でAT IIIと結合して凝固阻害作用を亢進させ、トロンビンを失活させて抗凝固作用を発揮します。
             したがってAT IIIが存在しない(低い)AT III欠損症では結合相手がいないため効力を発揮しません。

            低分子量ヘパリンもヘパリンと同様の作用機序をもちますが、トロンビンとの結合力が弱く、抗トロンビン作用が少ない一方で主に活性第X因子を阻害し
           て凝固阻害作用や抗血栓効果を発揮します。」と。多少凝固系に対する働きの機序が違うようです。
             ( https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1064254845?__ysp=YXRpaWnmrKDkuY%2Fnl4cg5a6f5oWL  より引用 )


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